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書評というほど立派なものではないブログ

読んだ本について徒然と書いていきます。正直こんなブログよりも本の方を読んでほしいので内容には詳しくは触れません。書評というほど立派なものは書けませんが、軽い気持ちで楽しんでいただき、気が向いたら実際に本を手に取っていただければ幸いです。

コミュニケーション能力養成講座 (小林隆,澤村美幸『ものの言いかた西東』)

いわゆる「方言」に関する本は多いが、本書が扱う「ものの言い方」とは狭い意味での「方言」にはとどまらない。本書がまず取り上げるのは挨拶に関する地域差である。そこで比較されるのは挨拶に用いられる文言それ自体ではない。挨拶を「するかしないか」である。挨拶の文言のみならず、挨拶を「するかしないか」についても地域差があるというのである。「方言」という視点からは盲点となっていた口に出すか出さないかという差異を皮切りに、従来の方言論からは盲点となっていたような地域ごとの言葉の違いが次々と語られていく。一つ一つのテーマはきっと誰もが感じているであろうことが実例とデータで示されており、興味深く読み進めることができる。(章ごとにまとめがあり頭にも入りやすい!)

 

また、本書は単に言葉の地域差を新しい視点から分析するにとどまらない。本書の終盤では、言葉の地域差は社会的経済的背景の従属変数であるという大胆な仮説が提示される。吉本新喜劇の影響で関西人の話し振りが形成されたのではなく、大阪の社会や経済の言語的・文化的結果が関西人の話し振りであり吉本新喜劇だというのである。新書という媒体ゆえに厳密な論証とまではいかず大まかな説明にとどまってはいるが、言葉というものに対する新しい視点を与えてくれたような気がする。言葉というものは社会、そして人間を映す鏡なのかもしれない。(発達ー未発達といった単線的な軸(最後にそのような発想の限界も指摘してはいるが)を使った分析は少し時代遅れな気はしたが・・・)

 

人と話すことが今までよりももっと楽しくなりそうな一冊。

 

 

ものの言いかた西東 (岩波新書)

ものの言いかた西東 (岩波新書)