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書評というほど立派なものではないブログ

読んだ本について徒然と書いていきます。正直こんなブログよりも本の方を読んでほしいので内容には詳しくは触れません。書評というほど立派なものは書けませんが、軽い気持ちで楽しんでいただき、気が向いたら実際に本を手に取っていただければ幸いです。

日本を理解する(千葉忠夫『格差と貧困のないデンマーク―世界一幸福な国の人づくり』)

なかなかすごいタイトルの本である。デンマークは格差と貧困がない世界一幸福な国だという。一体どんな国なのだろうか。

 

本書を開くとまずはデンマークに格差がないと始まる。2007年のデンマーク相対的貧困率(この数値自体の含意については議論もあるだろうが)は5.3%だ という。ちなみに日本は14.9%だ。凄い!デンマークは本当に格差がないのか!と感心していると、すぐさまその秘訣が紹介される。デンマークでは租税負担率がなんと69%でOECD諸国の中で断トツのトップ、日本の24.6%よりもはるかに高い。ちなみに消費税率は25%だ。収入の7割近くが税金として取られて再配分されているから相対的貧困率が低いのだ。そこまですれば格差はなくなるかもしれないけど、そんなに税金でとられちゃ働いてられないよ、納めた税金もまともに使ってくれるかわからないし、などと私などは思ってしまう。しかし、デンマークでは政府による再配分が国民のコンセンサスとなっているという。うーん、日本とは人々や社会の気質そのものが違うんじゃないのかなあ。

 

というように、確かにデンマークのやり方はいいところはあるとは思うけど、仮に日本でやろうと言われても賛成できるかは微妙だし実現できるんだろうか、と歯に物が挟まったような感じで本書を読み終え後書きに目をやった。「私の考えとしては、デンマークのよいところだけを伝えたいという姿勢があります。… 当然、デンマークが完全に理想的な国だとは思っていません。ただ、… 一つのモデルでご紹介しているのです」なるほど。おそらく著者は日本の目指してきた方向性が完全に間違っていると思っているわけでもないし、そのために取り組んできたことが一定程度成功を収めてきたことも認めているのだろう。そのうえで日本の現状をさらによくしていくための考える材料として、日本とは全く違うものを目指し日本とは全く違う手法によってそれを実現しつつあるデンマークをあえて理想化して紹介することで、日本を相対化するきっかけを与えようとしているのが本書なのだ。著者はデンマークを通じて日本について考えてほしいのである。他のものと比較するというのは、何かを深く、そして批判的に理解するための基本的な方法であるから。

 

デンマークを知りたくて手に取ったはずなのにいつの間にか日本をもう一度見つめなおすことになってしまった一冊。

 

格差と貧困のないデンマーク―世界一幸福な国の人づくり (PHP新書)

格差と貧困のないデンマーク―世界一幸福な国の人づくり (PHP新書)