坑夫ぬーどるのブログ

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宗教法人の解散と財産の行方について

面白そうなニュースを見つけたので、法律的なところを少し調べてみました。

mainichi.jp

 

お寺の財産を国有化する手続きがあるんですね。ということで、宗教法人の解散の手続きについてちょっと調べてみました。

宗教法人については、宗教法人法に規定があります。まあ、この文だけなら当たり前のような感じですけれども。今回は宗教法人の解散と清算について簡単にまとめていきたいと思います。

(実際に宗教法人の解散の事務を行う場合は、この記事をうのみにするのではなく、信頼ある書籍を参照したり弁護士に相談するなどしてくださいね。)

 

宗教法人の解散事由

宗教法人は自ら解散することができるほか、解散事由が生じたときに解散することになるとのことです。

 第四十三条 宗教法人は、任意に解散することができる。
2 宗教法人は、前項の場合のほか、次に掲げる事由によつて解散する。
 一 規則で定める解散事由の発生
 二 合併(合併後存続する宗教法人における当該合併を除く。)
 三 破産手続開始の決定
 四 第八十条第一項の規定による所轄庁の認証の取消し
 五 第八十一条第一項の規定による裁判所の解散命令
 六 宗教団体を包括する宗教法人にあつては、その包括する宗教団体の欠亡

 

2項1号の「規則」は、会社法でいう「定款」のようなもので、設立時に認証を受ける必要があります(法12条)。

2項2号の「合併」については、法32~42条に規定があります。

2項3号の「所轄庁」は、原則都道府県知事ですが、県をまたぐような法人の場合には文部科学大臣となるそうです(法5条)。

2項4号の「認証の取消し」は、宗教法人がそもそも宗教団体ではなかった、というような場合にのみ行われるものとなります(法80条1項、法14条1項1号、法39条1項3号。)。

2項5号の「裁判所の解散命令」は、裁判所が所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で行うもので、こちらも事由が限定されています(法81条1項)。同項1号の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。」については、信教の自由との関係で合憲性が争われたこともありましたが、「専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし、かつ、専ら世俗的目的によるもの」であることや、「手続きの適正も担保されている」ことなどを理由として合憲性は認められているようです(最決平成8年1月30日)。

2項6号の「包括」は宗教法人法上用いられている用語ですが、定義は法律上はないそうです。親会社子会社の関係のようなイメージでしょうか。

 

任意解散の手続き

法43条1項の任意解散を行うためには、まず法人内で任意解散を行う旨の決定を行う必要がありますが、規則の定めに基づいて責任役員の決定(規則に定めがなければ過半数)によって行うということになります(法18条4項、19条。)。

 

解散を行うことを決定した後の手続きは以下のとおりです。

まず、「信者その他の利害関係人」に対して2か月以上の期間を定めて公告を行います。「信者その他の利害関係人」は意見申述を行うことができます。

第四十四条 宗教法人は、前条第一項の規定による解散をしようとするときは、第二項及び第三項の規定による手続をした後、その解散について所轄庁の認証を受けなければならない。
2 宗教法人は、前条第一項の規定による解散をしようとするときは、規則で定めるところ(規則に別段の定がないときは、第十九条の規定)による外、信者その他の利害関係人に対し、解散に意見があればその公告の日から二月を下らない一定の期間内にこれを申し述べるべき旨を公告しなければならない。
3 宗教法人は、信者その他の利害関係人が前項の期間内にその意見を申し述べたときは、その意見を十分に考慮して、その解散の手続を進めるかどうかについて再検討しなければならない。 

 

公告期間が終了した後は、所轄庁に認証の申請を行い、所轄庁が審査のを経て認証を行うことで、解散の効力が生じることになります。

第四十五条 宗教法人は、前条第一項の規定による認証を受けようとするときは、認証申請書に左に掲げる書類を添えて、これを所轄庁に提出し、その認証を申請しなければならない。
 一 解散の決定について規則で定める手続(規則に別段の定がないときは、第十九条の規定による手続)を経たことを証する書類
 二 前条第二項の規定による公告をしたことを証する書類

 

第四十六条 所轄庁は、前条の規定による認証の申請を受理した場合においては、その受理の日を附記した書面でその旨を当該宗教法人に通知した後、当該申請に係る解散の手続が第四十四条の規定に従つてなされているかどうかを審査し、第十四条第一項の規定に準じ当該解散の認証に関する決定をしなければならない。
2 第十四条第二項から第四項までの規定は、前項の規定による認証に関する決定の場合に準用する。この場合において、同条第四項中「認証書及び認証した旨を附記した規則」とあるのは、「認証書」と読み替えるものとする。

 

第四十七条 宗教法人の第四十三条第一項の規定による解散は、当該解散に関する認証書の交付によつてその効力を生ずる。

 

宗教法人の破産手続き

宗教法人の破産については、申立者について規定があります。破産法19条1項(法人の破産手続き開始申立者に関する規定)には宗教法人に関する規定がないので代表役員(代務者)が申立者になることを規定していることと、代表役員(代務者)の申立義務について規定しているというのが以下の条文でしょうか。

第四十八条 宗教法人がその債務につきその財産をもつて完済することができなくなつた場合には、裁判所は、代表役員若しくはその代務者若しくは債権者の申立てにより又は職権で、破産手続開始の決定をする。
2 前項に規定する場合には、代表役員又はその代務者は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。

 

この他は基本的には破産法が適用されるということになりそうですね。また、清算中に財産が足りないことが分かった時にも清算人の申立てによって破産手続きに移行することになっております。

第四十九条の五 清算中に宗教法人の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになつたときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをし、その旨を公告しなければならない。
2 清算人は、清算中の宗教法人が破産手続開始の決定を受けた場合において、破産管財人にその事務を引き継いだときは、その任務を終了したものとする。
3 前項に規定する場合において、清算中の宗教法人が既に債権者に支払い、又は権利の帰属すべき者に引き渡したものがあるときは、破産管財人は、これを取り戻すことができる。
4 第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。

 

清算の手続き

宗教法人の解散の効力発生後も、清算の完了までは法人格は存続します。この点は会社と一緒ですね(会社法473条)。

第四十八条の二 解散した宗教法人は、清算の目的の範囲内において、その清算の結了に至るまではなお存続するものとみなす。 

 

解散時には清算人が選任されるのも会社と一緒です(法49条、会社法478条)。清算人の職務も会社法とほぼ一緒ですね(会社法481条)。

 第四十九条の二 清算人の職務は、次のとおりとする。
一 現務の結了
二 債権の取立て及び債務の弁済
三 残余財産の引渡し

 

清算人は終了後に債権者への公告、知れている債権者には申出の催告を行い、債権者を探して清算を行うことになります。ここで申出をしないと、他の債権者に劣後するどころか「宗教法人の債務が完済された後まだ権利の帰属すべき者」に財産が引き渡されてしまった後は債権を回収できないことになります。

第四十九条の三 清算人は、その就職の日から二月以内に、少なくとも三回の公告をもつて、債権者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨の催告をしなければならない。この場合において、その期間は、二月を下ることができない。
2 前項の公告には、債権者がその期間内に申出をしないときは清算から除斥されるべき旨を付記しなければならない。ただし、清算人は、知れている債権者を除斥することができない。
3 清算人は、知れている債権者には、各別にその申出の催告をしなければならない。
4 第一項の公告は、官報に掲載してする。

 

第四十九条の四 前条第一項の期間の経過後に申出をした債権者は、宗教法人の債務が完済された後まだ権利の帰属すべき者に引き渡されていない財産に対してのみ、請求をすることができる。 

 

残余財産の処理

以上のように、解散した宗教法人の財産は、まずは清算手続きのなかで債務の弁済に充てられるわけですが、それでも財産が余ったというときにどうなるかという、ようやく今回の記事の本題の話になります。

 

まずは、規則の定めに従うということになります。先述のように「規則」は会社でいうと定款のようなものとなりますが、会社では残余財産は株主に分配する(会社法504条等)のに対して、宗教法人は営利目的ではありません(法2条、6条等)ので、規則で定めておけばよいということなのかもしれません。残余財産の帰属は「規則」の相対的記載事項ですかね(12条1項10条)。

規則に定めがない場合は、他の宗教団体や公益事業のために財産の処分を行うことができることになっています。宗教法人が公益目的の法人であるためでしょうか。

他の宗教団体や公益事業のために処分することもしなかったときは国庫に帰属するということになっています。今回の件だと誰も引き取ってくれなかったのですかね。

第五十条 解散した宗教法人の残余財産の処分は、合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除くほか、規則で定めるところによる。
2 前項の場合において、規則にその定がないときは、他の宗教団体又は公益事業のためにその財産を処分することができる。
3 前二項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する。

 

財産が国庫に帰属する例としては、相続で相続人が見つからず、特別縁故者への財産の分与もできなかった場合がありますね(民法959条)。

 

 

正直私は何をやっているのかという感じはありますが、会社との違いなども含めて調べてまとめてみると面白いものですね。たまにはこういう記事を書いてみるのも勉強になりますね。

 

また気が向いたら更新します。