日本学術会議について調べてみた
最近日本学術会議の話題が世間を騒がせていますね。世間といってもその界隈だけかもしれないですが。
ということで、というわけでもないですが、日本学術会議とは何か調べてみました。といっても、ネット上で得られる情報は玉石混合ですし、平日は会社員として働いていて取材とかする時間もないので、確実なところとして法律やウェブサイトを見てみましたので、簡単にまとめてみます。
(この記事は日本学術会議の会員の任命について特定の立場を表明するものではありません。)
日本学術会議とは何のための組織か
日本学術会議法の前文には以下のように記載されています。
日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。
これとは別に、組織や目的に関する規定もあります。
第一条
この法律により日本学術会議を設立し、この法律を日本学術会議法と称する。
2 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。
3 日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。第二条
日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。
日本学術会議は何をしているところか
日本学術会議法で規定されているのは以下のような事項です。
第三条
日本学術会議は、独立して左の職務を行う。
一 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
二 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。第四条
政府は、左の事項について、日本学術会議に諮問することができる。
一 科学に関する研究、試験等の助成、その他科学の振興を図るために政府の支出する交付金、補助金等の予算及びその配分
二 政府所管の研究所、試験所及び委託研究費等に関する予算編成の方針
三 特に専門科学者の検討を要する重要施策
四 その他日本学術会議に諮問することを適当と認める事項第五条
日本学術会議は、左の事項について、政府に勧告することができる。
一 科学の振興及び技術の発達に関する方策
二 科学に関する研究成果の活用に関する方策
三 科学研究者の養成に関する方策
四 科学を行政に反映させる方策
五 科学を産業及び国民生活に浸透させる方策
六 その他日本学術会議の目的の遂行に適当な事項第六条
政府は、日本学術会議の求に応じて、資料の提出、意見の開陳又は説明をすることができる。
第六条の二
日本学術会議は、第三条第二号の職務を達成するため、学術に関する国際団体に加入することができる。
2 前項の規定により学術に関する国際団体に加入する場合において、政府が新たに義務を負担することとなるときは、あらかじめ内閣総理大臣の承認を経るものとする。
政府から独立して、政府の諮問を受けたり、政府に勧告を行ったりする組織のようですね。
その内容は日本学術会議のウェブサイトに掲載されています
会員の任命はどのように行われるのか
会員に関する規定はこれでしょうか。
第七条
日本学術会議は、二百十人の日本学術会議会員(以下「会員」という。)をもつて、これを組織する。
2 会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。
3 会員の任期は、六年とし、三年ごとに、その半数を任命する。
4 補欠の会員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 会員は、再任されることができない。ただし、補欠の会員は、一回に限り再任されることができる。
6 会員は、年齢七十年に達した時に退職する。
7 会員には、別に定める手当を支給する。
8 会員は、国会議員を兼ねることを妨げない。
「推薦」に基づいて内閣総理大臣が「任命」するということに担っているようですね。推薦に関する第17条は以下のような規定になっています。
第十七条
日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。
210人のうち半数ずつ改選ですので、一回に105人が任命されることになるようです。今回は日本学術会議が105人を「推薦」したところ、そのうち99人が「任命」されたということでしょうか。
会員の任命に関する法的な論点(私見)
全然調べたりしたわけではないのですが、TwitterのTLを見た限りでは今回の任命に関する法的な論点は次のようなところでしょうか。(私のTLは偏っている可能性があるので、他にも法的な論点があるのかもしれませんが。)
- 日本学術会議が「独立して」(3条柱書)職務を行うとされており、日本学術会議自身が会員を「推薦」(17条)することとされている一方、日本学術会議は内閣総理大臣の「所轄」(1条2項)とされていることを踏まえて、内閣総理大臣による会員の「任命」(7条2項)に推薦された者を任命しない裁量が(どの程度)あるといえるか。
- 学問の自由や行政権に関する以下の規定をはじめとする憲法との関係をどう考えるか。
第二十三条 学問の自由は、これを保障する。
第六十五条 行政権は、内閣に属する。
以上の論点を考えるうえで整合的に説明する必要がありそうな規定としては、退職についての規定がありますかね。
第二十六条
内閣総理大臣は、会員に会員として不適当な行為があるときは、日本学術会議の申出に基づき、当該会員を退職させることができる。
法的な論点として考えても、私自身まだ自分の考えがまとまっておりません。(まあ、まとまってもブログには書かないとは思いますが。)
日本学術会議の会員の給料は
ちなみに、日本学術会議の会員の給料についても法律の規定を調べてみました。
日本学術会議法には以下の規定(再掲)があるのみです。
第七条
(中略)
7 会員には、別に定める手当を支給する。
日本学術会議の会員は、特別職の職員の給与に関する法律において「特別職の職員」に定義されていました。同法の規定は以下のとおりです。
第一条
この法律は、次に掲げる国家公務員(以下「特別職の職員」という。)の受ける給与及び公務又は通勤による災害補償について定めることを目的とする。
(中略)
七十二 日本学術会議会員第九条
第一条第四十五号から第七十二号までに掲げる特別職の職員(以下「非常勤の内閣総理大臣補佐官等」という。)には、一般職給与法第二十二条第一項の規定の適用を受ける職員の例により、手当を支給する。ただし、同項中「人事院の承認を得て」とあるのは、「内閣総理大臣と協議して」とする。
上記の規定で準用されている一般職給与法第二十二条第一項は以下のような内容となります。
第二十二条
委員、顧問若しくは参与の職にある者又は人事院の指定するこれらに準ずる職にある者で、常勤を要しない職員(再任用短時間勤務職員を除く。次項において同じ。)については、勤務一日につき、三万四千二百円(その額により難い特別の事情があるものとして人事院規則で定める場合にあつては、十万円)を超えない範囲内において、各庁の長が人事院の承認を得て手当を支給することができる。
実際に会員にいくらが支払われているのかは、ググった範囲ではよくわかりませんでした。
所感
法律を読み解いてみただけでもそれなりのことがわかりますね。SNSとかを見るだけでもいろいろな議論がされているようですが、上に述べた法律の規定は間違いのない事実ですので、これらを踏まえた議論が深まっていくといいですね。
私自身は何かしら見解を表明しようというつもりはありませんが、このように法律を中心に情報を整理することも有意義かと思いますので、今後も気が向いたらこういう記事も書いてみたいと思います。
また気が向いたら更新します。